「栄花物語」の中のどんぐりの木
2009 / 09 / 08 ( Tue ) 栄花物語の中には、シイ、クヌギ(つるばみ)、カシワなどがでてきます。
<シイ> 喪服の染料としてのシイや、食べ物のシイの実などがでてきます。 四方山の椎柴残らじと見ゆるも、あはれになん。 村上帝の葬儀で、皆喪服であるのを表現しています。 かかるほどに、椎を人の持てまいりたれば、女御殿の御方へ奉らせたまひける。 御筥の蓋を返したてまつらせたまふとて、女御殿、 ・ありながら 別れむよりは なかなかに なくなりにたる この身ともがな と聞えたまひければ、大納言殿の御返し、 ・奥山の 椎がもとをし 尋ね来ば とまるこの身を 知らざらめやは 女御殿、いとあはれと思さる。 椎の実をある人が持参したので、女御殿の御方へおさしあげになった。 御箱の蓋を返そうとなさって、女御様、 生きていながら別れるよりは、かえって死んでしまっているこの身であってほしいものよ。 と申し上げられたので、大納言殿(公任)の御返歌、 奥山の椎の木のもとを尋ねてくるなら、 俗世にいるのと同じこの身であることをお知りにならぬはずがあおうか。 女御様は、たいそう悲しく思わずにわいらっしゃれない。 というような意味です。 大納言(公任)が世をむなしく思い、出家の準備をすすめているときのものです。 どちらの歌も、この身と「(椎の)木の実」をかけています。 <クヌギ> 色としての橡(つるばみ)が何箇所かでてきます。 ・青き白橡の汗衫 ・黒橡の御小袿 ・黒橡にならせたまふ。 <カシワ> この相任、本柏の所より中納言の君に、 古くから関係のあるもの。ここでは(皇后の)兄(相任)の意です。 本柏という表現は、狭衣物語にもでてきましたね。 スポンサーサイト
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