太宰治と井伏鱒二と橡
2010 / 01 / 20 ( Wed )
井伏鱒二はその作品「善福寺川」の中で太宰治との交流について触れています。
太宰は鱒二に試作原稿をよく見てもらっていたそうで、
太宰の試作原稿「ナターリアさんとむがしこ」の内容についても触れています。
その中の津軽むがしこ(昔話という意味)という箇所が抜書きされていて、

井伏鱒二「善福寺川」から

津軽むがしこ

あるどこさ
ツルバミの木が一本 あったずおん、
そこさカラスが来て があて鳴けば
ツルバミの実は ぽたんと落づるずおん、
そこさカラスが来て またがあて鳴けば
ツルバミの実は またぽたんと落づるずおん、
そこさカラスが来て またがあて鳴けば
ツルバミの実は またぽたんと落づるずおん、
そこさカラスが来て またがあて鳴けば
ツルバミの実は またぽたんと落づるずおん。



太宰の試作原稿「ナターリアさんとむがしこ」はどうなったのでしょうか?
作品「雀こ」の始まりと終わりに、この津軽むがしこ、と似た文がありました。
(他の作品にもあるかもしれません)

太宰治「雀こ」から

雀こ
井伏鱒二へ。津軽の言葉で。
太宰治

長え長え昔噺(むがしこ)、知らへがな。
山の中に橡(とち)の木いっぽんあったずおん。
そのてっぺんさ、からす一羽来てとまったずおん。
からすあ、があて啼(な)けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。
…………………………

これが作品の最後にも繰り返されます。

太宰治の「雀こ」はネット上(青空文庫のHP)でも読むことができます。


「雀こ」では[ツルバミ]が[橡(トチ)]になっていますね。

ツルバミクヌギの古名とされています。
橡の読みは、クヌギの古名「ツルバミ」ですが、
古くから「トチ(栃)」の当て字としても用いられてきました。
(私のパソコンでは「とち」を変換しないと橡の漢字はでてきません)
津軽(青森県)にはクヌギの木は自生していないので、
津軽むがしこでは、「トチ」がふさわしいでしょう。

井伏鱒二が見た太宰の試作原稿には「」とフリガナなしの漢字で書かれていたのでは?
などと考えたりもします。

それにつけても昔から今にいたるまで、どんぐりの木の漢字は、
他の種類の木と併用されている漢字(など)が多くてややこしいかぎりです。
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